正月2日に、埼玉・東所沢の「角川武蔵野ミュージアム」へ。スタンダードチケットは完売していたので、こちらの『荒俣宏の妖怪伏魔殿2020』のチケットをネットで購入し、行ってみました。
〈会期〉2021年2月28日(日)まで
新年から妖怪!?と自分ツッコミしつつ。昨年、水木しげるさんの本をたくさん読んだからかな。個人的には、妖怪さんには畏敬の念を持って接したいと思っています。
妖怪と言えば、2020は感染症予防対策として?!、日本らしく?「アマビエ」さんという妖怪さんが世に広く知られることになりましたね。水木しげるさんの「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる妖怪さんくらいしか知りませんが、どんな妖怪さんと会えるでしょうか?
「角川武蔵野ミュージアム」アクセス、「レストランSACULA DINER」は別記事にしていますので、そちらもどうぞご参考に。
入口のあるエントランスは2階、『荒俣宏の妖怪伏魔殿2020』の会場は1階なので、この合田誠さんが描く〈巨大アマビエ〉左手にあるエレベーターか、
この〈奈良美智さんの「PEACE HEAD」〉のマスコットがいる奥の階段から下へ降ります。
こんな空間が広がっている奥に、『荒俣宏の妖怪伏魔殿2020』の会場があります。
会場入口で、スタッフさんにチケット(スマートフォンの画面)を見せて、手指を消毒して中へ。
〈撮影について〉
NGなのは動画撮影、フラッシュでの撮影。フラッシュなしでは撮影可能。
もうすでにおどろおどろしい感じ。
妖怪回廊
妖怪回廊、ちょっと暗くて見にくいけれど、「気鋭のイラストレーターが描く、原始から現代までを網羅する新しい妖怪絵巻」「障子の向こうに潜むかわいい妖怪キャラクターの仕掛け」など(パンフレット説明より)。
水木しげるさんによると、
人間が妖怪をいじめている
妖怪というのは、やっぱり闇夜が必要なんです。
(中略)
真っ暗の夜というのは、妖怪の故郷なんです。電気がついて、世の中が明るくなると、もう妖怪はいなくなる。
(中略)
水木サンから言わせると、最近は人間が妖怪をいじめて、出にくくしているのです。
『人生をいじくり回してはいけない』(水木しげる/ちくま文庫)P165
うっすらとした明るさが妖怪にはちょうどいいんです。最高なのは行灯の光です。行灯が消えたから、妖怪もまた消えました。それが証拠に蛍光灯が普及してから、新しい妖怪が出てきません。蛍光灯の光は、行灯と違って想像力を働かせないんです。
『人生をいじくり回してはいけない』(水木しげる/ちくま文庫)P167
とのこと。ここは妖怪さんたちの居心地も良さそうです。
一つひとつ、しっかり、ゆっくり見るには時間が必要。
この妖怪、心くすぐられました↓
↓意味深い井上円了さんの言葉。
【井上円了さんについて】
井上円了さんは明治・大将時代の哲学者・教育者。東洋大学の前身である「哲学館」創設者。NHK歴史秘話ヒストリア「陰陽師と妖怪博士」では「怪奇現象と呼ばれる 人を惑わす 謎や不思議の正体を科学の視点から解明することに人生をかけ『妖怪博士』と呼ばれた」と紹介されていました。ここで言う妖怪とは「不思議で異常な現象」のこと。
世の中に妖怪や不思議と言われる現象がたくさんある
それらを神や魔の仕業としてしまわずに 本当の原因を明らかにすることこそ学者の使命である
『令知会雑誌』より NHK歴史秘話ヒストリア「陰陽師と妖怪博士」
と、「妖怪学」、「妖怪学講義」を発表し、急速に西洋化が進む明治期「新しい時代 若者に必要なのは未知なるものに向き合い、真実を見極めることだ」「根拠のない迷信に惑わされず真実を見極める力をつけることこそ大切だ」と人々に語った人。
また、身の回りに不思議な現象が起きた場合に、以下の分類を手掛かりに真実を見極めればよい、と具体的に不思議現象の正体を解き明かし、残してくれています。
- 自然現象で起こる「仮怪(かかい)」(火の玉は地中から出る天然ガスなど)
- 偶然を不思議と思い込んだり、見間違いなど人の受け取り方に原因がある「誤怪(ごかい)」
- 人がわざと仕組んだ「偽怪(ぎかい)」
そして、そんな円了さんですが、その人生の最後に「真怪(しんかい)」という題で著書を残されています。上の3つの怪奇現象の正体の他に「真怪」という分類もありました。それは
「『真怪』どんなに科学が進歩しても解き明かせない不思議な現象」
迷雲を払って真月(しんげつ)を見よ。妄眼を拭って真怪に接せよ
目先の迷いや偽りを払った先に本当の不思議が見えてくる。
清風明月是真怪
清らかな風 美しい月こそが真怪なのだ
一滴の水も 一片の雲も 皆 妖怪なり
NHK歴史秘話ヒストリア「陰陽師と妖怪博士」
東京・中野にある井上円了さんが造った「哲学堂公園」。入り口では「幽霊と天狗」の像が人々を迎えています。円了さんも、その人生でもしかしたら「妖怪たち」に出会ったのかも知れません?
日本の妖怪大集合
ゲゲゲの鬼太郎でお馴染みの妖怪さん、出身地、ここだったのね!
子泣き爺は徳島県。ぬりかべは福岡県。
カワウソも妖怪なんですね。出身地は石川県でした。
昨年、有名になった疫病退散の心強いアマビエさんの絵もたくさんありました。
ぬらりひょんもいました。
秋田のナマハゲも、鬼だと思っていたら妖怪なのですね。アマハゲもいました。
こんなコーナーも↓。
カミサマ人形道祖神
東北では今もカミサマを身近に体感できるお祭りがあります(パンフレットより)。
実物大の秋田の人形道祖神など迫力満点でした。
ミイラと化石
鳥天狗のミイラなど。
こんなのも↓
タノシイアヤシイショップ「妖怪伏魔店」
こちらでは、グッズなど。
お店の前には荒俣宏さんが集めた『福助さん人形』がたくさん。
コレクター部屋
張子人形作家の荒井良さんの張子お面や、作家の京極夏彦さんのコレクション、三田平凡寺さんのコレクション。三田平凡寺さんは初めて知ったけど面白い人だ。
妖怪大戦争の部屋
薄暗いこちらの部屋には一反木綿やぬりかべと記念撮影ができます。
映画「妖怪大戦争」の撮影の時に実際に使用されたマスクもありました。
盂蘭盆の部屋
プロジェクションマッピングのような部屋
荒俣宏の妖怪講座インタビュー
壁に掛けてあるペンライトを手に取って、黄緑の壁の部分に絵を描けます。
〈妖怪絵コンクールの作品〉
この〈妖怪絵コンクールを含む妖怪プロジェクト〉は「武蔵野回廊国際芸術祭」の第一歩とのこと。こんな思いが込められています↓
ここにこの言葉を紹介したいと思います。
〈アフターコロナは人も妖怪も住みやすい時代に?〉
先の水木しげるさんの『人生をいじくり回してはいけない』(ちくま文庫)にはこんなことも書かれていた。2015年2月10日 第1刷発行の本。
妖怪の棲めない国はダメになる
真っ暗の夜というのは、妖怪の故郷なんです。電気がついて、世の中が明るくなると、もう妖怪はいなくなる。
今みたいに明々と電気をつけて、夜を昼みたいにして遊ぶというのは邪道です。夜は真っ暗で静かにして寝るというのが、本来の姿。
水木サンから言わせると、最近は人間が妖怪をいじめて、出にくくしているのです。
『人生をいじくり回してはいけない』(水木しげる/ちくま文庫)P165
水木さんは生まれたときから妖怪が好きで、戦争でニューギニアのほうに行った時に、現地の人たちと自然に妖怪の話をすることができたのだそう。
当時、向こうはランプもなくて、夜はほとんど光がない生活をしていた。そういうこともあってか、現地の人たちは妖怪、妖怪と騒いで怖がっていたのだそうです。
現地の人たちは妖怪、妖怪と騒ぐのは、実際の怖がっているんですよ。だから彼らは、夜あんまり遠くに行かないようにしていました。
闇夜の中で生きるニューギニアのような生活を、人間は何万年も続けてきた。ところが、今の子どもは電気のある中に生まれていますから、夜も昼みたいに明るくして遊んだりする。これは自然に逆らうようでよくないことです。だから逆に、自然から嫌われてしまうんじゃないですか。
『人生をいじくり回してはいけない』(水木しげる/ちくま文庫)P167〜168
また、神社や祠についても
日本には、神社や祠が多いけど、あれも妖怪と同じことじゃないですか。神社や祠に何かお願いしても、あんまり神様が活躍してくれる感じはしない(笑)。でも、日本人はああいったものを決して潰したりはしなかった。それは、神様というより、何か異次元の力があるような気がするので、畏れ、触れないようにして残してきたのだと思うんです。
『人生をいじくり回してはいけない』(水木しげる/ちくま文庫)P165〜166
子どもの頃、神社は、本当に妖怪さんたちが住んでいるような気がして怖くて、近寄らないようにしていたから、水木さんの言っていることが分かります。
今は、感染症を予防したり、拡大を抑えるために、「夜の飲食を控えるように」「時短営業」などを重視されるようになりました。もしかしたら、これまでの生活はやはりどこか自然に逆らって、無理をしていきた生活なのかも知れません。人にも、妖怪たちにも。
自然に沿った生き方、ヒトだけではなく、色んな存在(野生の動物、山、川、海とか)にも無理をさせない世界になっていくのが自然な生き方なのかも。