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上野・国立西洋美術館「内藤コレクション展III『写本彩飾の精華』神は細部に宿るってこれ!

『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』のチケットで【常設展】と【内藤コレクション展III『写本彩飾の精華』】もみることができます。

【常設展】はいきなり、ロダンの彫刻たちが迎えてくれます。教科書で見た「考える人」もここで観ることができます。

絵画は宗教画から、宝飾品、印象派、それこそ今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー展で見られる画家たちの他の絵も、こちらで観ることができるんです。ピカソやレオナール・フジタの絵もね。

中庭にほっとします

そして、今日、楽しみにして来たのは「内藤コレクションIII『写本彩飾の精華』」。「内藤コレクションⅠ」を観てこんな美しく繊細な世界があることを知ることができました。その小さな世界の細やかさ、繊細さ、精巧さ、美しさ、ユーモア・遊び心、そしてこの一枚の中にたくさんの強い祈りが込められている空間に魅了されました。

【内藤コレクションとは?】(国立西洋美術館の説明による)

時代は印刷技術のまだなかった中世ヨーロッパ。知の伝達として、人々の信仰を支えてもいた写本(私の中での「写本」のイメージは般若心境などの文字を連綿と綴ったもの、でした)。まだ製紙技術も発達していなかった頃、羊や子牛などの動物の皮をなめして作った紙に人の手で膨大な時間を掛けて書き写し、制作された写本は、特権的立場にある人々のみに所有が許された贅沢品だったそうです。

コレクションをした内藤裕史さん(筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授)は、

私は高校生の頃から学生時代を通じて、古今東西の絵画・彫刻・工芸・民芸・から建築・庭園に至るまで、おおよそ色と形のある物全てに興味を持ち、美しいと感ずるものは生け花の展覧会まで見て歩き、それは留学先のニューヨーでも続いていた

国立西洋美術館「コレクションへの道のり」パンフレットより

と言うほどの美しいものへの情熱と審美眼を持っていらっしゃる方。

内藤さんによると国立西洋美術館に寄贈することになった動機や経緯にあたって、コレクションが外国の研究者に知られるようになり、問い合わせや依頼や指摘に対して素人では能力的にも時間的にも対応しきれなくなったこと、大英図書館の研究者からも問い合わせがあり、彩飾写本は文化財で、コレクションは自分だけの所有物ではないのだと知ったこと、

米国には一つの美術館ができるくらいの規模の個人コレクションは珍しくない。それらが寄贈されて美術館は成長する、集めたあげく最後には、その一切を社会にもどす。得た金をそのまま社会に換言するのではなく、その価値を、絶対にその人でなければ出来ないような増やし方で増やして社会にもどす。自らの人生をかけるそのコレクションが百年後に、自分を生み育てた社会にとって、どんな意味をもつべきか、ということが頭の中に常にある、それが恵まれた立場にある人の生き方と心得ている人が米国には多かった。

国立西洋美術館「コレクションへの道のり」パンフレットより

と、集めるだけ集めて楽しんだらオークションに出しお金に換えることしか念頭になかったのが、オークションに出せば、これら「画家の名や作品の銘にこだわらす、中世の無名の画家のセンスと才能に魅力さえ感じたら落ち穂拾いのように買い求め」、「ヨーロッパ中世千年にわたる美の遺産の中から選びとるその緊張と厳しさと喜びの集積」のコレクションが散逸することになる。それを避け、日本に残すとしたら、「国立西洋美術館は松方コレクションをはじめとする近代絵画で有名だが中世美術は弱い。このコレクションをヨーロッパ中世美術の核の一つとして生かしてもらえるのではないかと考えた」そうです。

そして、寄贈するなら『美術館へ』と思った理由は、国立西洋美術館学芸課長あてに書かれた手紙の中でこのように述べられています。

寄贈するとしたら図書館ではなく美術館、と思った理由は、収集の視点があくまで、優れた美術、魅力的な美術、優れた画家の才能とセンス、であったからです。

国立西洋美術館「コレクションへの道のり」パンフレットより『 国立西洋美術館学芸課長あてに書かれた手紙』

ゴシック美術に特に親しみをお持ちになった内藤さん。「いくら憧れてもゴシック美術はほとんどすべてが寺院とそれに付随する彫刻だから、身辺に置いて楽しむことなど想像することさえできなかった」のが、この写本を見て「これはゴシック美術そのものではないか」と気付いて、「ゴシック美術の本物を身辺に置くことが出来るんだ、と言う身の震えるような感動が全身を貫いた」そうです。

パンフレットより↓『グラティアヌス教令集』。

↓イニシャルBの内部に「プサルテリウムを奏でるダヴィデ王と祝福する神」。字体もブレがなくて本当に美しい。鮮やかな赤や青や緑、そして金。

今回の出品作は、聖歌集に由来するレリーフもその一つ。

国立西洋美術館学芸課長あてに書かれた手紙には、また、このようなことも記されています。

中世彩飾写本は造本の性質上、開いて展示するわけにはいかず、世界中、美術的価値の高いものほど極端に人の目に触れにくいという性質があります。しかし完本をばらした一枚ものは壁に掛けて身近に置いて日常楽しめ、美術館や図書館でも展示が容易、見る人が親しむことが出来る、美しさが万人のものとなる、という、意外に知られていない大きな特徴があります。

国立西洋美術館「コレクションへの道のり」パンフレットより『 国立西洋美術館学芸課長あてに書かれた手紙』

そんな思いもあって寄贈されたこの作品の数々をこのタイミングで目にすることができて本当にありあたい機会だと思いました。

展示されている作品、獣皮紙というのも珍しいですし、一枚一枚、そして、その部分部分が本当に息を呑むそしてため息が出るような美しさでその世界に入りこめます。

こちらもお時間が許す方はぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?心がくすぐられる作品たちです。

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