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「鬼滅の刃」「大河の一滴」なぜ今人氣なのか・苦しみに寄り添い乗り越えるということ

熊本、大分、北部九州を始め、この度の令和2年7月豪雨で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げますと共に、天候を含め生活の安寧を心よりお祈り申し上げます。

今年5月9日放送の日本テレビ【世界一受けたい授業】作家・五木寛之さんの回を録画して観た。五木さんのご著書『大河の一滴』は22年前に書かれた本だというのに、今多くの人に読まれているそう。自然災害だけではなく、感染症予防だったりで、混沌とした空気が漂っているように感じる今、とても印象に残った番組だった。

【世界一受けたい授業】で五木さんが今伝えたいこと③

「極限状態を乗り切れる人はどういう言葉を言うことができるのか?」挨拶の大切さ

『大河の一滴』では環境保護活動家のC・Wニコルさんの北極や南極への調査探検でのエピソードが出てきます)

「南極でテント生活をしているとどうしても人間は無精になるしそういうところで体裁を構う必要がないから身だしなみなどということはほとんど考えなくていいわけです。にもかかわらず、その中にはきちんと朝起きて顔を洗って一応、服装を整えて髪も撫でつけ顔を合わせると『おはよう』と挨拶をし『いただきます』と言う。こういう社会的なマナーを身につけた人が意外にしぶとく強く厳しい生活環境の中で最後まで弱音を吐かなかった。厳しい状況の中でもちゃんと挨拶ができるとかマナーとかエチケットとか、そういうことを忘れない。こういうことっていうのは極限状態の中で生きていく上では大事なことかもしれないと思います。」

5月9日放送の日本テレビ【世界一受けたい授業】作家・五木寛之さん

人間には〈体〉という物体のなか、もしくは皮膚と皮膚の間に気概や精神〈心〉というのでしょうか、そういう目に見えないなにかが流れていて一つの個体をつくっているのではないか−という気がするのです。

五木寛之『大河の一滴』(幻冬舎)p 140

『大河の一滴』の中のこの後に先の「南極などの極地で自分を見失わない人」のことが続いて書かれています。

「身だしなみを整え、挨拶をする」これは周りの人を心地よくする、不快感を与えないので、結果、コミュニケーションが円滑に運んで過ごしやすくなるということに繋がっているのかも。そして、日々を、今を、丁寧に愛おしみながら、大切に過ごすということと通じるのではないかと思う。

また、『コミュニケイションのレッスン』(鴻上尚史)という本の中でも「挨拶の重要性」が述べられています。

自分のことをコミュニケイションが下手と思っている人で、単純に「挨拶をしない」だけで、事態を複雑にしている人が多いと僕は感じます。

コミュニケイションが下手なのではなく、挨拶が下手なことでコミュニケイションが広がるきっかけを失っている人たちです。

人付き合いのうまい俳優さんは、朝、稽古場に来ると、先輩俳優や演出家の所まで気軽に近寄って、「おはようございます」とふんわりと挨拶します。これで、その日一日、先輩俳優や演出家と口をきく機会がなくても大丈夫なのです。

それぐらい最初の印象は大切なのです。その日出会った最初の印象が、一日を決めるのです。

鴻上尚史『コミュニケイションのレッスン』(だいわ文庫)

あのゲーテも「あいさつ」は大切だと説いています

 あいさつを重んじる

 あいさつを重視しよう。

 ゲーテは言う。

「行儀作法は、人間のすべてが映し出される鏡である」

「あいさつをみただけで、軽薄さがわかれば、誰も頭をさげないはずだ」

 賢者はあいさつひとつで、人間の内面を見抜く。

『ゲーテに学ぶ賢者の智恵』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 適菜 収=編者/メトロポリタン・プレス

追記2020年10月28日放送のテレビ朝日系「あいつ今何してる?」で、〈謎解きクリエーター〉松丸亮吾さんのご家庭が紹介されていました。良吾さんは四人兄弟の末っ子。一番上のお兄様(長男)もテレビなどでご活躍されている〈メンタリスト〉のDaiGoさん、そして次男はアプリ開発プログラマーの彗吾さん、三男は調香師の怜吾さんという松丸一家。松丸家のお父様の教育方針について「『勉強しろ』と言ったことはないが『挨拶』はしっかりするように育てた」と語られていました

世界一受けたい授業】で五木さんが今伝えたいこと④

「自分はもうダメだと覚悟を決めた人間にがんばれと言わない」

「励ましが通らない世界ってある。そういう時には『激励』『前向き』『励まし』『希望の言葉』が非常に空々しく無力に感じられるものなんですね。相手に寄り添い、その人の苦しみを分かってあげることが大切」

「私たちはいつもすれすれのところできわどく生きているのだ。」

5月9日放送の日本テレビ【世界一受けたい授業】作家・五木寛之さん

「孤立した悲しみや苦痛を激励で癒すことはできない。そういうときにどうするか。そばに行って無言でいるだけでもいいのではないか。その人の手に手を重ねて涙をこぼす。それだけでもいい。深いため息をつくこともそうだ。熱伝導の法則ではないけれど、手の温もりとともに閉ざされた悲哀や痛みが他人に伝わって拡散していくこともある。」

五木寛之『大河の一滴』(幻冬舎)

吉本ばななさんがエッセイ『すべての始まり』(幻冬舎文庫)の中で

「大勢がいいというものにはなにか納得できるものがある。そしてその『大衆』『大勢』というものは思ったよりもずっと知的で正確なものである。それは確かなことだと思っています。」

吉本ばなな『すべての始まり』(幻冬舎文庫)p162

と述べていらっしゃいますが、今、コミック売れ筋ランキングのトップ20全てを占めていると昨日テレビのバラエティ番組で言っていた『鬼滅の刃』。「大勢がいい」と言っているこの作品。主人公の炭治郎は飛び抜けて”臭い”を嗅ぎ分けることができる。鬼や相手の急所、「悲しみ」なども炭治郎は臭いで感じ取る。戦い物は苦手だが読む機会に恵まれた。

この『鬼滅の刃』第5巻の終わりのほうで先輩・義勇に言われた時に炭治郎はこう返す。

義勇「人を喰った鬼に情けをかけるな。子供の姿をしていても関係ない。何十年何百年生きている醜い化け物だ。」

炭治郎「だけど鬼であることに苦しみ自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない 鬼は人間だったんだから 俺と同じ人間だったんだから 足をどけてください 醜い化け物なんかじゃない 鬼は虚しい生き物だ 悲しい生き物だ」

『鬼滅の刃』第5巻

このシーンが『鬼滅の刃』の柱のような気がするのです。

立場が逆転している人でさえも「悲しみに寄り添う」。炭治郎はその後も鬼を退治した後も、その悲しみや苦しみに寄り添い続ける。

これだけ読まれていると言うことは、生きていく上で誰の心にも鬼にならざるを得ない状況や鬼にならないように押し込めて来たものがあるのを、読んでいくうちに、鬼や炭治郎や仲間たちがその気持ちを浮き上がらせ、寄り添い、溶かして行ってくれているのかも知れない。

そして、この炭治郎、周りの立場が自分よりも下の人に対しても上の人に対しても「お疲れ様です。」など挨拶をしている!「大河の一滴」で「極地でも自分を見失わない人」「極限状態でも乗り切れる人」の通りの人物!キャラクター設定もしっかりされている!

「鬼滅の刃」、「大河の一滴」がなぜ今読まれているのか。この辺にあるのではないかと思う。

世界一受けたい授業】で五木さんが今伝えたいこと(他には)

  • 「本当に辛いときこそ、ユーモアを持つこと(笑うことが大切)」
  • 「できることからやっていくことが今大事(八方塞がりでも十方じゃないじゃないか。もう二方開いたところがあるんじゃないか。活路を見出す。)」
  • 「悲しい時は悲しい歌を」
  • 「人間の存在とは、本当に取るに足らないような小さなものである『けれども』大きな水の流れをかたちづくる一滴であり、永遠の時間に向かって動いていくリズムの一部なのです。」

といった内容でした。どれも、なるほど、と心に響きました。

できることからやっていくことが今大事」というところで、以前読んだ本「ハウ・トゥ・アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法」の内容と重なっていることを思い出しました。

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