おすすめ記事 PICK UP!

【新宿・SOMPO美術館】『ウジェーヌ・ブーダン展−瞬間の美学、光の探求』で感じたもの

・会期: 2026年4月11日(土)~6月21日(日)
・会場: SOMPO美術館
・開館時間 : 10:00 〜 18:00 (金曜は20:00)
※入館は閉館の30分前まで
・休館日 : 月曜日

怪我の功名か、牛に引かれて善光寺参りか

今回は「勘違いが、結果的に最高の結果を連れてきた」というお話です。

もともとお目当てにしていたのは、同館で秋に開催される『アルベール・マルケ展』(2026年9月22日〜12月13日)。NHK Eテレの『アートシーン』で、あのマティスが「北斎のようにすばらしい」と称えていたと知り、「これは絶対に観ておかなければ!」とすっかり頭がそのモードに。

そんなときに偶然【パルシステムチケットサービス】の「SOMPO美術館 組合員特別価格1,900円」広告が目に入り、「これ!」と注文していたのです。

数日後、郵送でチケットが届きました。「会期はまだずいぶん先だから、引き出しにしまっておこう」と思いつつも、何となく封を開けてみたのです。券面を見た瞬間、「あれっ、もう開催中?!」と目が飛び出そうになりました。

『ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求』。うん、ブーダン、知ってる!海と空の風景の人じゃないか!

これまで足を運んだ展覧会でその作品を何度か目にしたことがあって、好きな感じの画風で、私の中で「ブーダンといえば海と空」というイメージは定着していたはずだった。それなのに、なんで今の今まで(マルケ展だと思い込んで)気づかなかったのだろう?「会期過ぎてた!ってことにならなくてよかった〜」と氣を取り直して本格的な梅雨の季節到来の前に西新宿へ。

さて、このうっかりミスのお陰で、思いがけなくブーダンの深い人となりを知ることになり、心に残る展覧会となったのでした。

SOMPO美術館へのアクセス、いつも地下道から行きます。モード学園のところから地上に上がるとこの通り。

所要時間は1時間半くらいでした

展示室は5階から始まります。直通のエレベーターで、一気に5階へ。平日の13時前でしたが、途切れることなくお客様がいらっしゃっていました。

Ⅰ.海景−海景画家の誕生

こちらの展示室は、撮影禁止マーク以外の作品は写真撮影が可能とのこと。これは嬉しい。 混雑を避け、空いている作品の前からゆっくりとマイペースに観て回ることにしました。

ここからは、特に私の印象に残った作品をいくつか紹介します。

朝日の昇ってくる空の刻々と変化する瞬間を眺めるのが私のささやかな喜びで、タイミングよくその時間に目覚めたら、飽きることなく空の色を追ってしまいます。まだ暗いうちに太陽の昇ってくるところあたりがうっすらと赤くなり、それからピンク色、オレンジ色と変わって太陽の頭が見え始めたかと思ったら、あっという間にぐんぐん力強く昇って、もう白っぽい。あの空がここにもあった。

6.《ボルドーの港、バカラン埠頭からの眺め》この柔らかい薄紅色の空の時間は果たして夜明けなのか夕暮れなのか。

6.《ボルドーの港、バカラン埠頭からの眺め》

朝の光景はこちら↓

13.《トルーヴィルの港の朝》

先ほどの柔らかな空気感とは打って変わり、9.《海景》は色の使い方に目を奪われました。

9.《海景》

なんといっても、空の青と海のエメラルドグリーンの色合い、 さらに見事なのが「白」の表現。空に浮かぶモクモクと湧き上がる様子の雲の白と、激しく泡立つ海の波しぶきの白――。同じ白でありながら、それぞれの質感や光の捉え方が見事に描き分けられていて、画面から波音が聞こえてくるかのような臨場感に圧倒されました。

「瞬間の美学」ですね。

帆船

4.《帆船の習作、夜》

写真斜めってしまったが、額縁も味わいがある。

10.《埠頭の帆船》

雲マークの子ども向けの解説に「ブーダンは白い帆に当たる光をよく観察して描きました。空と水面が「やわらかくつながって見えますが、どのように描いているのでしょう。」とありました。9.《海景》では空と海とがはっきりと分かれていましたがこちらはつながっていますね。海面に映る帆船の姿も、いいなぁ。

どこかで見たことのあるような懐かしさを感じた作品

子どもの頃に海水浴に連れて行ってもらったあの海と砂浜の風景と重なるものがあった。記憶の中の海景。

8.《ベルク、海岸》
12.《ドーヴィル》

ブーダンの観察眼

オンフルールの港町で、船乗りの父のもとに生まれたブーダン。幼い頃は自身も船に乗り、天候を読むためにずっと空を見つめて育ったと聞いて納得。刻々と変化していく情景を捉えることができたのも、その原体験があったからこそなのですね。

人生を豊かにしてくれるのは友人

また、ブーダンの交友関係も紹介されていた。『サン=シメオン農場にて』ではモネも一緒に並んでいた。

国立西洋美術館の松方コレクション、クロード・モネの《並木道(サン=シメオン農場の道)》と繋がります。

ブーダンは良き人間関係に恵まれていたんですね。オランダ出身のヨンキントの影響力も大きかったよう。そして「空の王者」と呼んだのはカミーユ・コローやシャルル・ボードレール。クールベからは「空のことを最もよく知っている画家」と称された。

「印象派の先駆者」とも呼ばれ、16歳年下のクロード・モネを戸外に誘ったのはブーダンだったとは。モネの師匠とも言われているのですね!今回の展覧会で初めて知りました。モネは最初は戸外に出て絵を描くことに乗り気ではなかったようですが、ついには「画家になったのはブーダンのおかげ」との言葉を残しています。

私の中で「瞬間の美学、光の探求」とはまさにモネのことだった。「積み藁」でも「睡蓮」でも刻々と変化する光と色を捉えようと描き続けてきたことが伝わってくるから。その姿勢はブーダンに学んだものだったとここでつながったのでした。

16歳の年の差なんて気にせずにいいと思ったら声をかけるブーダンの姿勢は、忘れないでいよう。

Ⅱ.空−瞬間の美学、光の探求

私の中ではブーダンはターナーと並ぶ「海」のイメージでしたが、「空」の画家と呼ばれていたのですね。これも今回初めて知ったことでした。

大空を泳ぐこと。
雲のやさしさへたどり着くこと。
灰色の霞のはるか奥に浮かぶあの塊を、宙にとどめ、青空を炸裂させること。

ウジェーヌ・ブーダン 1856年12月3日の日記

展示室の壁にあった言葉に、ブーダンが大空や雲をこんな思いで見つめ向き合い、描いていたんだと知る。この人のこの感性に胸がいっぱいになった。

こちらは会場での撮影は不可。

《空の習作》が並んでいて、筆の動き、色の重ね方に惹かれた。

タッチが、モネの最晩年に似ているなと思った作品もあった(モネがブーダンに似ているのかな)。

素描−part1 樹々、空、船、海−本質を捉える

「素描をしなさい、素描を。絵画で重要なのはそれだけだ」

ウジェーヌ・ブーダン

この言葉からも、ル・アーヴルからの奨学金を得てパリへ上京し、ルーヴル美術館で自分の作品を描く時間も惜しんで模写に励んだという姿勢からも、ブーダンの人となりが見えてくる。ただひたすらに、観察し、対峙し、手を動かすことをやっていたんだなぁ。

Ⅲ.風景−バルビゾン派からの学び

Ⅳ.建築−旅する画家が見た風景

Ⅴ.動物−身近なものへの眼差し

Ⅵ.人物−戸外の群像風景

素描−part2

版画−イメージの伝播

と、続いて巡りました。

モネの家族が描かれている作品もありましたよ。そして、モネ亡きあと、モネが所蔵していた絵画を息子さんが発見して、モネの画として発表されていたのだけれど、専門家の方々がどこか違和感を感じていて、描いたのはウジューヌ・ブータン!とされる作品もありましたよ。

目の前の対象に目を向けたり、描きたいものを求めて旅をしたり、パステル、油彩、木炭、鉛筆とありとあらゆる画材を使い、エッチング、リトグラフと技法も色々と挑戦していることが伺えた。素早く筆を動かし仕上げたものもあれば、緻密に描きこんでいる作品もあり。ブーダンは好奇心も旺盛だったのかな。試行錯誤をきっと楽しみながらやっていたんではないのかな。

氣がついたら、ブータンの作品とそこから見えてくる人柄に夢中になっていた。

嬉しいおまけもありました。A5サイズの“鑑賞ガイド”、カラー印刷で用意されていました。最初のページは見開きの地図。ブルターニュ地方、ノルマンディー地方、と地方別に色分けされていて、港の位置も記されています。フォンテーヌブローの場所も、パリとの位置関係も分かりやすい。次のページからは地方別に、一つ一つの港の説明とその地で制作された作品も掲載。学芸員さんの渾身の氣遣いがうれしい。「本冊子は、展覧会にあわせて作成されました。」とあり、執筆・編集はSOMPO美術館学芸員の桑名真吾さんのお名前がありました。

所蔵品コーナー

アンドレ・ドランの《海辺》、アルマン・ドルーアン《港》、本日これまで見てきた海の景色との違いをここで楽しめるとは。

ゴッホの《ひまわり》の前はさすがに人気で人が多かったので、他の作品の前へ。

モーリス・ドニ!今日会えて嬉しい。ドニの温かい眼差しで描く子どもの絵がたまらない。

モーリス・ドニ《抱き合うクレールとポール》

ポール・セザンヌの《りんごとナプキン》も。セザンヌのりんごの色合いも味わい深い。

最後に《ひまわり》。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》

思ったより時間が経ってしまって、次の予定の時間が迫っていたので、ミュージアムショップには立ち寄らずに美術館を後にしました。

#『ウジェーヌ・ブーダン展』SOMPO美術館

関連記事

  1. 角川武蔵野ミュージアム『荒俣宏の妖怪伏魔殿2020』とウィズコロナ・アフターコロナの世界

  2. 国立新美術館《メトロポリタン美術館展》と1階《カフェ コキーユ》

  3. 上野・国立西洋美術館「内藤コレクション展III『写本彩飾の精華』神は細部に宿るってこれ!

  4. 【10/2(日)まで!】埼玉県立近代美術館アクセスと「シアトル→パリ 田中保とその時代」所要時間、混…

  5. 【東京駅・上野駅】皇居外苑楠公レストハウスランチと東京藝大美術館『相国寺展』

  6. 都営大江戸線六本木駅からミッドタウン『サントリー美術館』への行き方

  7. 【上野・東京藝術大学美術館】特別展「日本美術をひも解く−皇室、美の玉手箱」混雑状況、所要時間は?

  8. 国立西洋美術館 「カフェ すいれん」 メニューなど

  9. 【上野・国立西洋美術館】リニューアルオープン記念「自然と人のダイアローグ」所要時間・混雑具合・グッズ…

PAGE TOP